「超高弾性カーボンは鮎釣りのために生まれた」

どうしてカーボンの振動吸収性がいいのか。しかしながら実は非常に振動を伝えやすい材料でもあります。カーボン繊維は実のところ釣竿、特に日本の「鮎の友釣り」のために大きく進化しました。10メートル近いさおを自由自在に操るため現在では300グラムを下回る釣竿があります。さらに鮎のかすかなあたりを感じ取り引きを吸収しつつ釣り上げる。それを作るためにはF1よりもスペースシャトルよりある部分で高性能なマテリアルが必要だったのです。
実は自転車で使われているカーボンの技術はもちろん釣竿とは根本的に製法で異なるところはあるにせよ少し遅れているのです。例えば昨年ランスがツール7連覇で使った「トレック、マドンSSLx」と言うバイクがありますが、これの特徴はBB周りの剛性向上、補強材としてボロンを使用したことです。しかしながら補強材としてボロンの使用は釣竿では10年以上前から使われ、そして近年では重量面で劣ることからほとんどのメーカーは辞めています。さらに振動減衰材として繊維の中に合成繊維を編みこむコロンバスマッスルのアラミドやタイムのべクトランなどの手法も10年前には釣りの世界では目的は違うにせよすでにありました。
釣竿のマテリアルとしてのカーボンは非常に振動を伝えやすくしてあります。なぜ振動を伝えるかと言うと自転車との大きな違いはカーボンの密度、レジンの割合が違います。さらに日本の鮎竿は100万円のロードバイクでも採用しないような高弾性つまりハイモジュラスなマテリアルを採用しています。振動伝達のヒントはここにあります。